曲名[ 三日月 ]に込められた願いとは?
三日月
作詞:youth case作曲・編曲:A-bee
Chorus Arrangement:Ko-Saku
2015年発売のアルバム[ Japonism ]に収録されています。
遠い場所にいる大切な人を想ったこの曲。
和と交わる電子的な音が、美しいです。
長い時の中、雨が降り川の流れが生まれるように感じました。
この記事の目次
- 曲を読み解く
- なぜ、タイトルが三日月なのか?
- 主人公は誰なのか?
- 主人公の願いとは?
- 恋人とは遠距離なのか?または死別なのか?
- 主人公の感情は悲しいなのか?または別なのか?
- 優しい歌声なのに、なぜ切なくなるのか?
- あとがき
1. 曲を読み解く
00:00
夜空を分ける川とは、天の川のこと。
二人の季節とは七夕のこと。
離ればなれである織姫と彦星が再会する日です。
天の川に願いが溢れている。
それは天の川を構成する無数の星のひとつひとつに願いが込められているということ。
たくさんの願いがあつまり、やがて大きな川になる。
大きな川をつくるほど、長い間、主人公は願い続けていたようです。
00:48
切ないほどの淡い光に主人公は涙を流します。
切ないの意味は、
寂しさ、悲しさ、恋しさなどで、胸がしめつけられるようにつらく感じるさま。
山口明穂・和田利政・池田和臣編(2013)『旺文社国語辞典』第十一版,旺文社.
淡いの意味は、
①(色・味などが)薄い。あっさりしている。「-ピンク」②かすかである。はかない。「-望みをかける」「-恋心を抱く」
山口明穂・和田利政・池田和臣編(2013)『旺文社国語辞典』第十一版,旺文社.
こちらは②の意味でしょう。
前述から星の光のことですね。
星は主人公の願いでした。
胸がしめつけられるほど、いまにも消えてしまいそうな願い。
主人公は涙を流します。
そしてその涙は胸に溶けていきます。
外へ出た涙が体の中へ戻っていくことから、願いを諦められず、くりかえし願ってしまうようです。
主人公にとってとても大切な願いのようです。
01:10
空に忘れないで、見守ってと。
忘れる可能性がある、つまり簡単に叶う願いではない。時間がかかるものだということですね。
流れる星粒は、そのままの川を流れる星と、願いを叶える流れ星というふたつの意味があるのかなと思いました。
[ 川を越えて行く ]から、織姫と彦星に自身たちを重ねているようです。
ふたりをへだてる川がある。
簡単に会える距離にいないということでしょう。
[ 夢で逢えるように ]から、 現実ではなかなか逢えないのではないかと思います。
[ 今宵もまた ]から、一度ではなく何度も夢での再会をしているようです。
夢でしか、再会ができないのかもしれません。
[ そっとおやすみ ]から、穏やかさを感じました。
夢での再会は、悲しいものではなさそうです。
02:01
月の光があると、天の川は見えづらい。
雲がかかると見えづらい。
これは相手に逢えないという障害を表しています。
天の川に浮かべた約束とは、再会のことでしょうか?
その約束がいまにも消えそうに揺れています。
ここからも成就の難しさを感じます。
02:24
川には星、つまり願いが浮かんでいます。
川からすくい上げた笑顔の記憶。
願いの中に相手の笑顔の記憶が宿っているのでしょう。
[ 消える前に ]から、記憶が消えていくことを知っているようです。
記憶が消える、というより新しい記憶が更新され思い出せないことが増えるといえばいいのでしょうか。
それは当たり前かもしれませんが、大切なひとの記憶は永遠に残ると、私は思いがちです。
相葉くんの過去の映像すべてを覚えてるかというと、、、難しい。悔しい。
まあ、忘れてしまった場合は、映像などを見返した時などに再度興奮できるからそれも楽しい。初めての興奮をもう一度、みたいな。つまりあれもこれもすべて無限に興奮できる。そして宇宙が生まれる。
記憶が消えることを理解している主人公。
[ ひとかけら ]とあわせて、以前は多かった記憶が少なくなっているのではと思いました。
最後に笑いあった日から時間が経っているようです。
[ 胸に灯せ ]から、まさに今、ひとつの記憶が消えていきます。
02:46
夜が終われば夢での逢瀬も終わってしまう。
どうか夜よ、終わらないで、と主人公は思います。
消える星粒とは、相手との記憶でしょう。
[ 見送って ]をどうとらえるかが難しいです。
見送って欲しい、なのか?
見送らないで欲しい、なのか?
前者なら、記憶が消えてなくなるまで記憶のそばにいてということ?
そばにいるということは、夜が存在する。
つまり夜が終わらない。
主人公が相手を覚えている限りは、夢だとしても逢いたい。
だから夜が終わらなければいいのに。ということでしょうか。
後者なら、記憶を見送って終わらないで欲しい。
記憶が残るならば、夜が終わってもかまわない、となります。
そうすると今宵の夢での逢瀬は必ず終わります。
目がさめるから。
でも寝ればまた夢で逢える。
相手を覚えているから。
不眠でなければ、毎日逢うことができるかもしれません。
前者と後者どちらも、逢瀬を終わらせないで、という意味ですね。
02:57
[ もしも ]とは、どういう時に使う言葉かあらためて調べました。
(「もし」を強めた言い方)万一。
山口明穂・和田利政・池田和臣編(2013)『旺文社国語辞典』第十一版,旺文社.
万一の意味は、
ほとんどないが、非常にまれにあること。万に一つ。万が一。
山口明穂・和田利政・池田和臣編(2013)『旺文社国語辞典』第十一版,旺文社.
叶わないと思いながらも、願うことを諦めきれない。
それほど大切なひとなのでしょう。
[ 巡り逢う ]から、来世でもあの人と恋をしたいという主人公の願いがわかります。
03:05
手拍子のような音がひときわ強くなっていきます。
雨が打ちつけるようです。
走るような、追いかけるような音の動きを感じます。
直前までゆったりと流れていた曲が、この間奏部分で新しい速度をみせてきました。
ラストのサビに入る前の、盛り上げの効果もあると思います。
03:31
雨を通りぬけ、目の前には星々が現れた。
そんな情景が浮かぶようです。
03:31のシャララララーが、私に一面の星空を見せてくれます。
晴れたね。
織姫と彦星は、ふたりは再会できるね。
2. なぜ、タイトルが三日月なのか?
歌詞に[ 三日月 ]という単語はひとつも出てきません。[ 月夜 ]が出てくるぐらい。
この曲の歌詞を読むと、天の川や七夕、星粒、織姫と彦星というイメージが強いです。
なぜ、タイトルが三日月なのでしょうか?
七夕のことを調べると、あるキーワードに出会いました。
それは[ 旧暦 ]と[ 上弦の月 ]です。
七夕は7月7日ですね。
これは現在日本で採用されている新暦。グレゴリオ暦です。
新暦が採用される前に使われていた旧暦。
旧暦では月の満ち欠けを基準としていました。
旧暦の7月7日は、新暦の8月頃になります。
7月7日は上弦の月となり、三日月はその少し前。7月3日ごろです。
旧暦の七夕には、上弦の月が天の川の西側に横たわります。
天の川の西側にはベガ( 織姫星 )が、東側にはアルタイル( 彦星 )が昇っています。
そして上弦の月は一晩から二晩かけて東側の彦星のもとへと渡っていきます。
まるで船が川を渡る様子から、[ 織姫が月の船に乗り、彦星に会いに行く ]というお話が存在します。
天の川は淡い光であるため、月明かりがあると地上から見えづらくなります。
ですが月の船があることで織姫と彦星が会うことができるんですね。
三日月がやがて上弦の月になり、そして船になる。
大切なひとに会うための船。
ふたりの再会の願いが、タイトルである[ 三日月 ]に込められているのではないでしょうか。
3. 主人公は誰なのか?
織姫?彦星?
それとも地上の人間?
夜空の川が遠いと感じていること。
また、天の川を隠す雲を見ていることから、地上の人間だと思いました。
恋人と自分の関係を織姫と彦星に重ねています。
4. 主人公の願いとは?
来世で大切なひとに再会すること。そしてふたりがまた恋をすること。
5. 恋人とは遠距離なのか?または死別なのか?
私は、主人公は生きており、相手はすでに亡くなっている方だと思いました。例えば、転校や単身赴任などの遠距離ならば、再会を叶えることは出来そう。
叶うまで時間がかかる、成就が難しいというのはしっくりきません。
なにかしらの事情により、相手が帰ってこれない。
または、主人公自体が相手のもとに向かうことが出来ないのではないでしょうか?
天の川という、生死の境目がそこにあるというか。
また、川ができるほど長く願っていること、願いである星が消えていくこと、来世の再会を願うことなど。
過去に大切なひとを亡くしたと思わずにいられませんでした。
6. 主人公の感情は悲しいなのか?または別なのか?
主人公にとって、再会を願うこと、夢で逢うことが日常の一部になっていると思います。[ そっとおやすみ ]から、その印象を受けます。
悲しさのそばに、穏やかさも感じる。
悲しい感情を受け入れ、寄り添い生きていくことを決めたのではないでしょうか。
7. 優しい歌声なのに、なぜ切なくなるのか?
前奏から間奏前まで、穏やかに曲が進むんですよね。音は聞こえるけど静か、というような。
再会を願っているけど、どこかで諦めが小さく聴こえてくるような。
しかし間奏が、雨の中を泣きながら走るようなんです。
雨で天の川が見えないから、あの人に逢えない。
嫌だ、消えないで。行かないで。というような。
あの音の中に、心の叫び・諦めたくないという気持ちがつまっているように感じました。
まるで主人公の心を見ているような。
諦めと、諦めたくないという心の矛盾が、あの間奏であらわになるのかも。
だから切なく感じるのだと思います。
8. あとがき
コンサートでは、2016年に行われた[ ARASHI”Japonism Show”in ARENA ]で披露されました。こちらは2017年発売の[ ARASHI LIVE TOUR 2016-2017 Are You Happy? ]初回限定盤の特典映像として収録されています。
にじむような色の演出と、神秘的な衣装、壮大で儚い光に胸が打たれます。
次の曲につながっていく流れも含めて、とても好きな映像体験です。
ぜひ、ご覧ください。
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